tripb35 チョコレート紀行 ─ベルギーへ行く─






その店は、アンティークジュエリーの専門店だった。
といっても、品数は多くはなく、
ぽつん、ぽつん、と置かれている。
ショーウィンドウで私がじーっと見ていた指輪を
店主が私に渡してくれた。
そっとはめてみる。
「これはいつのものですか?」
「1920年から30年で、フランスかベルギーのものだよ」
それにしては、すごく綺麗。
アンティークらしく、リングの部分が細くて
1粒のダイヤモンドを花びらのような細工が支えている。

すると、店主が、私の胸元を見て言った。
「いいのをしているね」
そう、今日買ったばかりの太陽のペンダント。
「ちょっと見せて」というので、外して見せると、
ルーペを出して、じっと見ている。
「これは素晴らしい。価値があるものだよ。僕は好きだ。」

私は、祖母の指輪を見せながら、
「私はダイヤモンドが好きだけど、何カラットあるとか、
高価だとかっていうのには全く興味がなくて、
人との出会いみたいに、縁のあるものを探していたんです」と話す。

すると彼は、こう言った。
「ジュエリーは、キャラクターだ」と。
キャラクター、つまり個性。個性と個性の出会いだから、やっぱり相性が大切。
彼は、私の指の形に変形していた祖母の指輪を、
あっと言う間にきれいなラウンドに修理してくれて、
ピカピカに磨いてくれた。まるで、違う指輪みたい。
そして、話はどんどん深い方へ。