tripb40 チョコレート紀行 ─ベルギーへ行く─






最後の最難関、魔のヒースロー空港に到着。
与えられた時間は1時間半ほど。
まず、荷物を受け取る。ターミナルを移動しなければ。
しかし、表示通りに進むと、なぜか地下鉄に出る。
バスじゃなかったっけ…?

もう迷ってる時間はないので、空港のスタッフに聞く。
髪を編み込みにしたミュージシャン風な青年。
聞けば、地下鉄でもバスでもどちらでも行けるらしい。
「とにかく時間がないの!」と伝えると、地下鉄の方へ案内してくれた。
親切にエレベーターまで一緒に乗ってくれて、
彼は仕事があるらしく、別の階で降りた。
ありがとう!いい人だ!!!





無事、地下鉄の改札まで行き、駅員に確認もし、
地下鉄に乗って発車を待っていた。
ドアが閉まる。

その時、マユミが「あ!」と声をあげた。
「何?」マユミの視線の先を見ると、閉じた扉の向こうに、さっきの青年が。
ガラス越しに、こっちに向かって何かしゃべっている。
「え?なに?」もしかして、間違ってるの??

再び、ドアが開いた。
彼が私に「ペンを貸して」と言う。
私は大慌てでカバンからペンを出し、彼に渡す。
何かの紙の切れはしに、走り書きをし、私に手渡した。
「僕の携帯番号。」
「え?」
「この辺りは、危険な人が多いから、何かあったらすぐに電話して。
とくに、黒い大きな人は、スリだから気をつけるんだよ」
「わざわざありがとう!気をつけます」
「僕は、エドウィン。君の名前は?」
「ミクです。」
「どこから来たの?」
「東京です」
「今度ロンドンに来たら、電話して」
「は、はい」
「僕は両親と住んでるんだ。紹介したい。」
「へ?」
「日本からも、電話して」
ちょっとちょっと、そこのお兄さん。いつのまにか親切がナンパにすり替わってないか…??
何もこんなに時間がない時に!! わざわざ地下鉄を止めてまで!!!

「本当に君に会えてよかった」と、はにかみながら手を差し出す彼。
いやいやいやいや、飛行機に乗らせてください。
地下鉄を出してください!!!
ヒースロー空港。ほんまに、どうなってんねん。