tripb32
チョコレート紀行 ─ベルギーへ行く─
*
感動冷めやらぬまま、併設されているカフェへ。
マユミはお気に入りのクロックムッシュと、もちろんビール。
私はアーティチョークのサラダとグラスワインを楽しみつつ、
マユミとファッションについて熱く語りあう。

ベルギーに来る少し前、友人が誘ってくれて
ある著名なファッションデザイナーのコレクションを見に行ったことがあった。
テントを張った小さな会場、ランウェイの両サイドに椅子が並んでいる。
音楽と同時にショウが始まり、モデルが歩き始めた。
思ったよりも、あっという間に、モデルは去っていく。
次々とモデルは入れ替わり、すべてが一瞬の出来事。
オートクチュールだったから、一見カジュアルなようでいて
生地からアクセサリーからすべてゼロから作られた、それはそれは豪華なものだった。
なのに、印象だけを残して、次の瞬間にはもういない。
その潔さ、儚さ、迸るエネルギーに心底驚いたのだった。
ファッションって。
その一瞬を生きるために存在するもの。
そして、記憶になる。
子どもの頃にお気に入りだった服。
あれも、これも、色や形はもちろん、感触まで覚えている。
それは確実に、今の自分の中にしみこんでいる。
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